保護者からのイチャモン(無理難題要求)の研究で知られる、小野田正利教授の講演会に参加した。以前、このサイトでも著書を紹介したことがある。
◆「教育メディア・リテラシー」 http://edurepo.com/?p=30
事例紹介や笑いを交えながらも、「モンスターって言うな!」のタイトルにこめた怒りを激しくぶつけてくる。圧倒された。
「『モンスター』って何なんですか、それは人格否定ですよ、化け物なら撃ち殺してもいいんですか!」
「モンスター」と名づけることで、学校現場はひたすら相手を排除しようとする。自分たちにも落ち度はゼロでは無いはずなのに、思考停止する。
保護者側は「あぁモンスターと言うなら言いやがれ」と歯止めが効かなくなる。本当はどこかで分かり合いたい、決着をつけたいのに後に退けなくなる。
怒鳴る教授を見ながら、マスコミの罪について考える。
言葉だけが走り出し、保護者の事例が面白おかしく伝えられ、無理難題を言う相手の本音を見失う。
もう少し、相手の気持ちを思いやって対応してみよう。
分かり合う、努力をしよう。
教授の話は、社会全体が「キレやすくなった」許容量の少なさにまで広がる。失言バッシングの狂気、クレーマーに対する過剰反応、孤立する育児、親離れ・子離れ・孫離れできない大人。
2時間、大きな文字を印刷した紙をホワイトボードにバンバン貼り付け、叩き落とし、踏みつけながら次々と問題と解決策を提示する。
教師向けのセミナーだったので、彼は最後にこう言った。
「教育にはロマンがある……というと、現場の先生たちに『学者はすぐロマンで片付ける』と怒られるだろうけど」と笑いながら一枚の紙を貼った。
「教育は愛とロマン、そして理性」
少し退いて生徒や保護者、学校全体を見渡す理性。それを教師が確保するには、華々しい実績だけじゃなく「調整能力」や「未然にトラブルを防ぐ」といった実績にも目を向ける必要がある。
ただし、基本給のアップを報酬にすると横の連携が切れるからダメだ、ビール一箱とかお米券60キロの「その場だけの報酬」でいいんだ……と、ぶわーっと畳み掛け、そしてこれに尽きるとバーンともう1枚紙を貼った。
「ストップ・ザ・教育改革」
一刻も早く、くだらない教育改革の全てを中止しろ、もっとじっくり生徒と保護者に向き合う時間を作れと言い放った。その後、しみじみと教師たちの顔を見つめながら、つぶやいた。
「どうか、死なないでください」
現場で精神と体を病み、倒れていく教師たちをたくさん見てきたそうだ。
「定年まで、健康で。定年後も、元気で。教育は素晴らしい仕事です。最後まで続けてください」
そして、「教材研究なんか中途半端でもいいから、よく寝てください。家では親がくたびれてて、学校では先生がくたびれてたら、子供たちは『大人になりたい』なんて思わなくなっちゃうから。教室で元気な声を出すためにも、寝ましょう!」と笑顔に崩れた。
根源的に「人間を見捨てない」姿勢、時代のせいにして努力を諦めない考え方、具体的な対応策。自己顕示欲のための講演でもなく、机上の空論だけの人ではないのが、よくわかる2時間だった。
イチャモンは人と人が結び合うきっかけ。親の「ウチの子のために〜しろ」を全て受け入れず、子どもが成長・自立するチャンスに変えようという考え方に、自分が塾の現場でしてきた対応を反省する。
「ウチの子に〜させるなんて!」を、
「この機会に、ウチの子に〜させてみよう」に変える。
できたら、褒める。
子どもにも親にも、自信と自立心が芽生える。
「保護者の要求をすべて受け入れることで、子どもの成長機会を奪っている」という小野田教授の考え方は、サービス業の看板のもとに保護者の御用聞きになりがちな塾業界こそ、肝に銘じるべきだ。
ぜひ、機会があれば多くの教育関係者・保護者に聞いてもらいたい講演だった。